デポジット型クレジットカードは前払式支払手段に該当するか? ③

【中央省庁の元法制度担当の弁護士による解説コーナー ~資金決済法・割賦販売法・出資法編~】
[キーワード:前払式支払手段、包括信用購入あっせん、二月払購入あっせん・マンスリークリア、預り金規制]

 本記事は、「デポジット型クレジットカードは前払式支払手段に該当するか?①」「デポジット型クレジットカードは前払式支払手段に該当するか?②」という記事の続きです。これまでの記事をお読みになっていない方は、まずはそちらの記事からお読みください。

これまでの記事(デポジット型クレジットカードは前払式支払手段に該当するか? ①)はこちら
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 これまで、デポジット型クレジットカードについて、①包括信用購入あっせん業者への規制、②クレジットカード番号等取扱契約締結カード事業者への規制、③前払式支払手段発行者への規制の適用について、前2つの記事で検討してきましたが、本記事では、④預り金規制について検討します。

(4)預り金規制

 出資法第2条では、他の法律に特別の規定のある者を除き、業として「預り金」をしてはならないとされています。では、デポジット型クレジットカードで事前に差し入れられている「保証金」は、出資法により規制されている「預り金」に該当するのでしょうか。
 金融庁が公表するガイドラインによると、「預り金」とは、預金等と同様の経済的性質を有するものとされており、次の4つの要件のすべてに該当するものとされています。

① 不特定かつ多数の者が相手であること。
② 金銭の受け入れであること。
③ 元本の返還が約されていること。
④ 主として預け主の便宜のために金銭の価額を保管することを目的とするものであること。

(網掛け部分は、預り金規制の適用が問題となるところ)

 上記要件のうち、①②の要件に該当することについては疑いは特にありませんが、③④の要件に該当するか否かは論点になり得ます。
 この点、デポジット型クレジットカードの「保証金」は、カード事業者が利用者に対して有するカード利用金額に相当する額の債権の担保を目的として設定されたものであり、その債権の不履行時に保証金から不履行となった債権額が充当されることとなっており、利用者においてデポジット型クレジットカードの利用をやめる等の事情がなければ保証金の返還を受けることができないといった事情がある場合には、上記③④の要件には該当しないものと考えられます。
 その他、「預金等と同様の経済的性質を有する」と判断される危険を回避するために、保証金に対して「利子・利息」を付さないような運用が望ましいと考えられます。

 なお、前回の記事のとおり、デポジット型クレジットカードが「前払式支払手段」に該当する場合も想定されますが、仮に「前払式支払手段」に該当する場合には、資金決済法の規制を受けることになり、その規制を受ける限りにおいては、事前預託された「保証金」について「払戻禁止義務」(資金決済法第20条第5項)が課されているため、上記要件③に該当せず、少なくとも出資法の観点からの懸念は解消されます。

(5)まとめ

 これまで3回の記事に分けて検討しましたが、デポジット型クレジットカードは、「クレジットカード」なのか、それとも「前払式支払手段」なのか等、複数の法律が交錯して、法律的にはなかなか奥深いものがありました。
 これを見極める分かりやすいメルクマールとしては、カード事業者による利用者への「与信」が存在するか否か、だと思います。割賦販売法では、クレジットカードを規制するに当たっては、それが「与信(立替)」であることを前提に、利用者への過剰与信とならないか等の観点から規制が課されています。一方で、資金決済法では、そのような与信(立替)を前提とするような特徴的な規制はなく、代わりに利用者から事前に資産を預かる点に着目して発行保証金の保全義務等が課されており、利用者資産をいかに保全するかに力点が置かれた規制内容となっています。
 そのため、デポジット型クレジットカードのみならず、新しい形態のクレジットカード等を設計する場合には、カード事業者が「与信(立替)」をすることになるか否かをまずは十分に確認することが重要と考えられます。
 なお、「与信(立替)」という要素が存在する場合には、「クレジットカード」というカテゴリに分類されることになりますが、いわゆる「1回払い」(=マンスリークリア/二月払購入あっせん)であれば、「包括信用購入あっせん」ではないため、割賦販売法上の「包括支払可能見込額」に関する規制を課せられず、せいぜい「クレジットカード番号等取扱契約締結カード事業者」への規制に服せば足りますので、最低限の規制の中で柔軟なサービス設計が可能となります。

記事作成・監修:弁護士 境 孝也
(なお、本記事は、執筆者が過去に所属・関与し、又は現在所属・関与する組織・機関の見解を記載するものではなく、執筆者の個人的な見解を記載するものです。)

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