「請求書カード払い」(BIPS)は為替取引に該当しないのか?②

【中央省庁の元法制度担当の弁護士による解説コーナー ~銀行法・資金決済法編~】
[キーワード:請求書カード払い(BIPS)、BPSP、為替取引、資金移動業、クレジットカード、前払式支払手段、収納代行]

 本記事は、「『請求書カード払い』(BIPS)は為替取引に該当しないのか?①」という記事の続きです。前回の記事をお読みになっていない方は、まずはこちらの記事からお読みください。

前回の記事(「請求書カード払い」(BIPS)は為替取引に該当しないのか?①)はこちら

(3)「請求書カード払い」(BIPS)は「為替取引」に該当しないか?

 「請求書カード払い」(BIPS)は、一見すると、「立替型の送金サービス」をBIPS事業者が提供しているにすぎないように見えます。ここでいう「送金サービス」とは、いわゆる「為替取引」のことです。「為替取引」の法律上の定義はありませんが、平成13年の最高裁判所の決定によると、以下のように考えられています。

為替取引を行うこと」とは、顧客から、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、又はこれを引き受けて遂行することをいう。(最決平成13年3月12日刑集55巻2号97頁) 

(為替取引・順為替型のイメージ)

(為替取引・逆為替型のイメージ)

 上記の「請求書カード払い」(BIPS)は、ややスキームは複雑ではありますが、要するに、顧客(支払人)である「バイヤー」(消費者等)からの委託(依頼)を受けて、銀行送金等の隔地者間で現金輸送に依らずに資金移動する仕組みを駆使して、支払先である「サプライヤー」(店舗等)への送金を行っているということには変わりはないように思われます。
 特徴的なのは、⑴バイヤーからの入金を受ける前にサプライヤーに支払を完了してしまうという点で「立替型」のサービスであること、⑵「バイヤー」(消費者等)からBIPS事業者への支払方法が「キャッシュレス決済手段」(クレジットカードや前払式支払手段(プリペイドカード)等)に限定されていること、⑶事業性取引に限定されていること(個人間送金に該当しないこと)の3点ですが、上記判例上の考え方を前提にすると、これらの3つの要素は「為替取引」該当性の判断に影響を与えるものではありません。
 そのため、特に立法上の措置がない限りは、「請求書カード払い」(BIPS)も「為替取引」に該当する可能性が高い行為であるといえ、BIPS事業者には銀行免許か資金移動業者登録等が必要になると考えるのが整合的であると考えられます。

 なお、本GLでは、BIPS事業者が銀行や資金移動業者であることを前提とはしていませんが、一般社団法人キャッシュレス推進協議会は民間の団体であり、そのような民間団体が策定する本GLに法律を上書きするほどの効力があるわけではありません。
 そのため、本GLの存在のみをもって、「請求書カード払い」(BIPS)を行うBIPS事業者が未来永劫に亘って、いわゆる為替取引規制(銀行や資金移動業者等への規制)を受けないことになるとは言い切れませんが、本GLにおいて「マネー・ローンダリングのリスクを軽減するための措置」(本GL第12条~第14条)や「BIPS事業者の信用リスクを軽減するための措置」(本GL第27条)等の銀行や資金移動業者への規制に類似する規定を設けることで、為替取引規制を別途課す必要性がないとの考え方に基づいているのではないかと推察されます。

本記事は、以上です。

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記事作成・監修:弁護士 境 孝也
(なお、本記事は、執筆者が過去に所属・関与し、又は現在所属・関与する組織・機関の見解を記載するものではなく、執筆者の個人的な見解を記載するものです。)

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